UVランプ照度低下が引き起こす樹脂版の光重合不良とは何か

フレキソ製版に用いられる感光性樹脂版は、紫外線(UV)による光重合反応によって硬化・形成されます。
この光重合反応は、「照射された紫外線量(=照度 × 時間)」が一定の閾値を超えて初めて、設計通りに進行します。

しかし、UVランプは使用時間の経過とともに、必ず照度が低下します。
問題は、この照度低下が急激ではなく、非常に緩やかに進行する点にあります。

樹脂版の露光工程では、

  • 表層の硬化
  • 網点肩部の形成
  • ベース部の十分な重合

といった複数の反応が、同時かつ段階的に進行しています。

UVランプの照度が低下すると、
樹脂が必要とする光エネルギー量に達しなくなり、以下の現象が起こります。

  • 表面は一見硬化しているが、内部の重合が不完全
  • 網点の肩が立たず、なだらかに崩れる
  • ベース硬化が弱く、印刷時に版が沈む

これらはすべて、**光重合が“途中で止まった状態”**と言えます。

照度低下による光重合不良は、
露光直後の目視検査では発見しにくいという厄介な特徴があります。

  • 現像後の見た目は一応成立している
  • 寸法・厚みも規格内に収まる
  • テスト印刷では問題が顕在化しない場合もある

しかし実際の印刷工程に入ると、

  • ハイライトが飛びやすい
  • インキ乗りが不安定
  • ロングランで急激に品質が崩れる

といった形で、遅れて問題が表面化します。これは、光重合不足により
樹脂の機械的強度・弾性が設計値に達していないためです。

特に影響を受けやすいのが、
ハイライト部および中間調の網点です。

照度が不足した状態で露光すると、

  • 網点の根元(ショルダー部)が十分に形成されない
  • 印刷圧に耐えられず、網点が潰れる
  • 版摩耗が早まり、印刷途中で階調が変化する

結果として、「版は合っているのに印刷が合わない」という現象が発生します。

これは、データ・製版条件ではなく、**露光光量という“見落とされがちな要因”**が原因であるケースが非常に多いのです。

よくある誤解として、
「照度が落ちたら露光時間を延ばせばよい」
という考えがあります。

しかし、照度が低下したUVランプでは、

  • 分光特性自体が変化している
  • 有効波長域のエネルギーが不足している

可能性が高く、単純な時間延長では均一な光重合は回復しません

むしろ、

  • 表層だけ過剰硬化
  • 内部は未重合

という不均一な版構造を生むリスクすらあります。

安定した光重合を維持するためには、

  • UVランプの照度管理
  • 適切な交換タイミング
  • 照度低下を前提としない光源選定

が不可欠です。特に、工業用途で実績のあるフィリップス社製UVランプのように、
照度低下が緩やかで分光特性が安定した光源を使用することは、
製版品質を長期的に守るうえで大きな意味を持ちます。

UVランプの照度低下による光重合不良は、
突発的なトラブルではなく、静かに、確実に進行する品質劣化です。

だからこそ、
「問題が出てから対応する」のではなく、
問題が出ない環境を維持することが、
これからのフレキソ製版に求められます。